22年1月19日、マザーズでの上場承認が得ていた株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングが上場取り消しすることが発表されました。
同社のリリースによると、
2021年12月28日開催の当社取締役会において、当社普通株式の株式会社東京証券取引所への上場に伴う公募による募集株式発行及び株式売出しに関する決議を行いましたが、新型コロナウイルス オミクロン株の世界的な感染拡大、及び最近の株式市場全般の動向など諸般の事情を総合的に勘案し、2022年1月19日開催の当社取締役会において、当該募集株式発行及び株式売出しの中止と、それに伴い当社普通株式の株式会社東京証券取引所への上場申請を取り下げることを決議いたしましたので、お知らせ申し上げます。
なお、今後の上場手続きの再開につきましては、株式市場全般の動向などを見極めたうえで、引き続き検討してまいります。
とのことです。
冒頭の記事のとおり、マザーズ指数が昨年の11月ころから急落しており、12月のIPO企業に直撃し、公募割れの企業が続出しました。
年明け後もマザーズ指数の下落傾向が続き、ビッグツリー社のように、上場承認後に上場の取りやめを決定する企業も出てきました。
公開価格が上昇傾向であったのに
マザーズ指数が低下する前の21年8月ころ、新規上場企業の公開価格の設定にあたって、主幹事証券会社の影響が強く、公正取引委員会が実態を調査する、との報道がありました。
公正取引委員会が金融庁と連携し、企業が新規上場する際の公開価格の設定プロセスについて、実態把握に乗り出したことが11日、分かった。市場で売買が初めて成立した「初値」との差額が欧米と比べ大きく、企業の資金調達額が少なくなっているとの指摘があることを踏まえた。独禁法や競争政策上の課題がないかどうかを調べる。公取委は今月、直近に新規株式公開した企業を対象に質問票を送付した。主幹事証券会社を選ぶ際に考慮したことや公開価格の設定における証券会社とのやりとりなどを確認する方針だ。必要があれば証券会社への聞き取りも行う。調査結果を踏まえ報告書をまとめるとみられる。
共同通信 2021年8月21日
この報道以降、公開価格が以前よりも高く設定される傾向でした。IPO企業にとっては、IPOによる資金調達がより一層可能となる環境となり、喜ばしい状況でした。しかし、一転、マザーズ指数が急激に低下することとなり、公募割れも出るに至りました。
公開価格の設定を無理できない状況に
IPO準備企業として、最終段階において、主幹事証券会社との公開価格の設定は最も苦労する場面の一つです。自社にとって、最適な株価を設定できることが望ましいのですが、この市場ですと、投資家からの資金が集まりにくい状態となり、割高と感じられる株価の設定はできない状況です。
新規上場の一番の目的は、資金調達であるところ、今のままでは、上場しても十分な資金調達をすることが難しい状態です。
これから上場を予定する企業は、無理な株価設定をせずに上場し、将来の株価上昇を待つ、という流れになりそうです。
とはいえ、市場環境が良くなり、本来の資金調達を十分に行うことができる状況に戻ることを願うばかりです。