東証マザーズに上場し、電車等の乗り換え案内サービスを提供する駅探が、いわゆる「委任状争奪合戦」で話題となった。最終的に、駅探の約30%を持つ株式会社CEホールディングス(CEHD)が株主提案とした役員選任議案を、駅探側が受け入れ、2020年6月29日に開催された定時株主総会では、CEホールディングスの株主提案による役員選任議案が可決された。
1.「パワハラ」がきっかけ
報道およびCEHDのリリースによると、頻繁に退職者が多いことをCEHD側が懸念し、駅探の元取締役がパワーハラスメントによるものとの情報を得て、駅探側に調査委員会を設置させていた。同調査報告書(非公開)では、パワハラに該当する可能性がある、との認定を行ったことをうけ、当該取締役は退任している。
その後も、CEHDは、駅探に対し、駅探の企業体質改善を求めるべく要請していたところ、その協議が暗礁に乗り上げ、今回の株主提案に至ったようである。
CEHDは、駅探側の経営陣に対し、相当、企業風土の改善を迫ったようである。株主提案にまで至るということは、CEHDの改善要求に、なかなか、駅探側が適切に対応していなかったことが推察される。
2.やはりパワハラ体質の企業はどこかで無理が出てくる
体育会系気質の会社の営業や事業推進力は、目を見張るものがあるのは確かである。私は個人的には体育会系気質の会社が好きではある。
しかし、私の経験側上、そのような会社には、その企業風土になじめない人がいて、その中で労務トラブルに発展することが少なくない。IPOを目指す企業の上場審査上も労務管理体制の適正化は必須とされ、厳しく審査される。IPOを目指す過程で、カリスマ社長によるパワハラが内部告発され、上場できなかった企業の話も耳に入ってくる。
3.パワハラ防止体制の構築が法律上の義務に
働き方改革が推進する中、パワハラ関連法制も2020年6月に改正され、企業のパワハラ防止措置が法律上義務化された。上場企業やIPOを目指す企業にとって、パワハラをはじめとするハラスメント防止に対する意識の向上、整備が不可欠となる。
4.自社の企業風土改革は「外の風」が必要
今回のケースは、駅探はCEHDから相当強く企業風土改革を求められていたにもかかわらず、自ら改善しなかったことが、ここまで問題を大きくした一つの要因である。やはり、自社の企業風土改革は難しい。
改善のポイントは、「外の風」である。
①社外役員や中途採用の中間管理職により新たな目を入れる
②企業風土調査のアンケートの活用(外部業者による実施)
といった、外部の視点から自社を客観的に評価してもらうことが必須である。長く企業に勤める社員にとって、「外の風」を持つ人の存在は貴重である。社員は「他の会社ってどんな働き方なんだろう?」ということを常に聞きたがっている。「外の風」を意識的に会社に吹かせることが企業風土改善の一歩となる。
駅探は役員体制を刷新して、新たなスタートを遂げている。企業風土改革とともに、CEHDとの業務シナジーの強化されていくことであろう。何よりも従業員の方々が気持ちよく仕事できる環境になったのであれば、今回の委任状争奪合戦の意味あるものだったのではと感じる。