2020年コロナ禍における新規上場と新市場区分のゆくえ

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【2020年IPO動向】

2020年、新型コロナウイルスに全てが影響を受けた年でした。新規上場も3月ころから緊急事態宣言が発令された5月にかけて、全てがストップする状況でした。しかし、6月の後半以降、一気に新規上場が進み、2020年12月まで、例年より多い102社(前年比8社増)の企業が新規上場にまで至っています。ベンチャー企業が通るマザーズ市場における新規上場は63社(前年比同じ)の状況です。


証券市場では、2020年1月6日の大発会時の日経平均が23,206円であったところ、コロナ禍の中、3月の東京オリンピック延期発表時、株価が急落したものの、12月現在26,000円にまで上昇しています。この株高が、新規上場数の上昇につながっています。

来年、この株価がどこまで維持されるのか、実体経済と株価が乖離しているのでは、という懸念点はあるものの、「コロナにより市場を破綻させない」という世界中の各政府機関、機関投資家の動きからすると、リーマンショックのような世界的な株安にならないのでは、とも言われています。コロナ禍真っただ中の先の見えない状況ではありますが、株高が続く限り、来年も新規上場は順調に推移するとみられています。

【大型IPOの初値時価総額の上位の推移】
190619 Sansan    マザーズ  1,425億円
191217 フリー       マザーズ  1,166億円
191216 JMDC      マザーズ  1,016億円
190305 日本国土開発    東証1部   613億円
190924 Chatwork  マザーズ   542億円
200917 雪国まいたけ    東証1部   837億円
200820 ニューラルポケット マザーズ   703億円
200803 モダリス      マザーズ   685億円
200302 カーブスHD    東証1部   568億円
201013 日通システム    マザーズ   553億円

【新市場区分のゆくえ】

上場企業、新規上場企業において、最もインパクトが大きいイベントが、これから実施される取引所の新市場区分への移行です。(新市場区分の概要等について・株式会社東京証券取引所)
現在、東証一部、二部、マザーズ、ジャスダックという区分から、プライム、スタンダード、グロースという3区分へと変更されます。現時点において、新市場区分への完全移行日は、2022年4月1日、とされています。これは日本取引所が、世界の投資家をさらに呼び込み、日本市場の活性化を図るために行う大改革です。現在の区分にマッチングしていない企業を再区分し、区分に応じた上場企業に整理をすることが想定されています。現在、マザーズ上場を目指している企業は、「グロース」市場を目指すことになります。

【新市場区分におけるポイント】

1.グロース市場におけるポイント
多くの変更ポイントがありますが、「グロース」への上場を目指す企業において、知っておきたいポイントが、
「高い成長可能性を実現するための『事業計画及びその進捗』の『適時・適切な開示』」が必要となる点です。
現在も有価証券報告書に基づく情報開示を行う必要がありますが、グロース市場においては、高い成長可能性を実現するための開示が必要とされます。
開示事項の主な点としては、
「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示項目
ビジネスモデル
事業計画 ①成長戦略 ②経営指標 ③利益計画及び前提条件 ④進捗状況
市場環境 ①市場規模  ②競合環境
リスク情報 ①認識するリスク ②リスク対応策
上記の中でも、利益計画など中期経営計画に該当するような事項を開示する必要があり、高い成長可能性をどのように保つのか、という観点での開示が求められます。

2.他の市場区分への移行が極めて難しくなる
 これまで、マザーズ企業が東証一部に移行する際の上場審査は、区分移行に伴う緩和された基準での移行が可能でした。
 しかし、新市場区分が実施されると、他の区分への移行の際は、新規上場と同様の審査が行われることになります。すなわち、グロースに上場後、プライムに移行したい場合、プライムの上場審査を1から受けなおす必要があるのです。これまでのマザーズ上場企業が順調に成長し、東証一部への移行を実現してきた企業は多数あります。今回の新市場区分が導入されると、その移行のハードルが極めて高くなる、ということです。詳細は取引所のウェブサイトを見てもらえれば記載してありますが、それはまた解説したいと思います。