「週休3日制」を導入する企業が増加!ここに注意!

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近年、「週休3日制」を導入する企業が増えており、注目されています。「週休3日制」は、柔軟な働き方を実現するものとして、従業員の満足度向上や柔軟な働き方の実現、離職防止などにつながるとされていますが、導入する際には、企業が注意しなければいけない点もあります。本記事では、「週休3日制」について概説した上で、導入する際の注意点について解説します。

【週休3日制】

「週休3日制」とは、文字通り、多くの企業が採用している週休2日制からさらに1日休みを増やして、1週間のうち3日間を休みとする制度です。
この「週休3日制」については、①賃金はそのままで出勤日の労働時間を増やすもの、②出勤時間が減ること(休日が増加すること)に応じて賃金も減額するもの、③賃金はそのままで休日だけ増やすものなどのバリエーションがあります。
各企業が工夫を凝らして制度設計をしていますが、「週休3日制」を導入するほとんどの企業では、従業員が希望した場合に「週休3日制」を選択することができるという制度にしています。

【週休3日制を導入する企業の増加傾向】

近年、この「週休3日制」を導入する企業が増えてきています。

2022年1月8日の日本経済新聞によると、パナソニックが希望者を対象に週休3日制を導入する方針を表明したほか、みずほフィナンシャルグループ、メタウォーター、ヤフー、ファーストリテイリングなどでも週休3日制が導入されているとのことです。

【週休3日制導入の目的】

2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(いわゆる「骨太の方針」)に、次のような記載が盛り込まれました。

選択的週休3日制度について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る。

これまで「週休3日制」は、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」を実現して従業員の満足度を高める手段という位置づけでした。しかし、最近では、従業員の満足度だけでなく、上述の「育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用」などの柔軟な働き方の実現のために「週休3日制」を導入するという企業も増えてきました。

また、塩野義製薬では、リスキング(学び直し)のために2022年4月から選択的週休3日制を導入するとのことです。このように、企業が「週休3日制」を導入する目的は、多様化してきています。

【週休3日制を導入する場合の注意点】

企業が週休3日制を導入する場合、次のような点に注意する必要があります。

生産性の低下が課題

従業員の休日が増えることになりますので、企業としては生産性の低下に注意する必要があります。生産性を維持するために新しい設備やシステムを導入する場合には、その分のコストがかかることにも注意が必要です。
なお、生産性の低下を回避するために、かえって残業が増えたり、あるいは新しい労働者を雇うようなことになれば、これは本末転倒と言わざるを得ないでしょう。

どのパターンの週休3日制にするかを慎重に選択する

各企業が週休3日制を導入する目的を明確にした上で、その目的を踏まえて、上述のどのようなパターンの週休3日制にするのかを検討する必要があります。多くの企業では、希望者に対しては休日を増やし、その代わりに賃金を減らすという方法をとる場合が多いと言えます。

もっとも、賃金水準を維持したいという要請もありますので、例えば、休みを増やした代わりに、出勤日については労働時間を増やという方法をとることも考えられます(なお、この場合、変形労働時間制を導入して1日の所定労働時間を増やす必要があります)。また、企業の中には、取引先の要望などに応えるために、休む日を分散させるなどの工夫をしている企業もあります。

副業の解禁についても併せて検討する

週休3日で増えた休みの日に、副業・兼業をする従業員が増えることが想定されます。企業として、従業員の副業・兼業の可否、許可基準などを明確にしておく必要があります。なお、政府は、副業・兼業を解禁する立場をとっており、法律論としても、従業員の副業・兼業を全面的に禁止することは困難です。せっかく週休3日制を導入するのであれば、むしろ、積極的に従業員の副業・兼業を認めていく姿勢を示すことも必要だと言えます。

不利益変更に注意!

なお、人件費やその他コストの削減を目的とした週休3日制を導入するのであれば、休日を増やしたことに伴い、賃金を下げるという方法をとることになります。この場合、従業員が自らの意思で選択できるような制度であればよいのですが、会社が一方的に命じるような場合は、労働条件の不利益変更の問題が生じます。従業員に対する制度変更の丁寧な説明、激変緩和措置や代替措置を講じるなど、従業員にとっての不利益が不合理なものにならないようにしないと、週休3日制の導入が認められない可能性がありますので、注意が必要です。