コンビニの24時間営業の強制は独禁法違反のおそれ

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24時間営業が嫌なら契約しなければよい!?

公正取引委員会は、9月2日、長年のコンビニ本部とオーナー間との問題について、とうとうメスをいれた。コンビニの本部とコンビニのオーナーとの間で締結されているフランチャイズ契約(FC契約)において、本部はオーナー側に24時間営業することを義務付けている。本来、契約は当事者間の自由に定められるものであり、契約書に定められたものは、法律に違反しないような事項ではない限り、基本的に効力は有効である。

そのため、これまで、コンビニのオーナーは、FC契約に定められている24時間営業の義務を守ってきた。本部側としても、全国のコンビニに対する信用力、物流効率化を図るために24時間営業とすることはビジネス上きわめて重要である。

コンビニ主要8社のブランド力は絶大であり、コンビニオーナーも、そのブランド力に頼ってFC契約を締結したのである。したがって、24時間営業を義務付けられることを、わかっていながら契約締結したのだから、今更、24時間営業を辞めたいというのはおかしい、というのが、本部側の考え方である。この考え方自体はおかしくない。そうでなければ、契約の意味がない。24時間営業が嫌なら、そもそもFC契約を締結してもらわなくてもよい、本部側の言い分は当然だといえる。

優越的地位の濫用とは?

優越的地位の濫用とは、取引上優位な立場にある企業が、取引の相手方に対し、不当に不利益を与えることをいう。これは独占禁止法で禁止されている。コンビニ問題は、本部が優越的地位にあたり、その地位を濫用しているのでは、という点が問題となっている。今回、公正取引委員会は、24時間営業を義務づけること自体が独禁法違反に該当すると判断しているわけではない。しかし、今回の公正取引委員会のコンビニ実態調査報告書の内容は、コンビニ本部にとって非常に厳しい内容である。

現在、コンビニは恒常的に人手不足である。報告書によると、93.5%の店舗が人手不足、オーナーの疲労がある、とされている。しかも、62.7%のオーナーが現在の24時間の営業時間について「辛い」「どちらかといえば辛い」と回答している。

オーナーが一人でほとんど休みなく稼働せざるを得ない状況に追い込まれている。公正取引委員会は、オーナーが本部に時短営業の要望を出した場合、本部がその交渉に応じなかったり、24時間営業を辞めたら何かしら不利益を与えられるかのような対応をされたことにより、その要望を引っ込めざるを得ないような事情があった場合には、優越的地位の濫用に該当する可能性があると指摘している。

報告書は、見切り販売の制限、仕入数量の強制、ドミナント出店戦略などの問題など多岐にわたってコンビニ問題に踏み込んだ調査を実施している。社会的なインフラとなったコンビニ業界の動きに国が警鐘を鳴らすとともに、コンビニ本部の対応はこれから極めて慎重な動きを要求されるだろう。

ベンチャー企業は大手企業から優越的地位の濫用されやすい

コンビニ問題とは少し離れるが、ベンチャー企業においても、大手企業との取引において、優越的な地位を盾に、極めて不利な契約条件に追い込まれることが少なくない。

特に、気を付けたいのは契約条項である。大手企業は法務部門が存在し、社内に弁護士まで抱え、徹底した契約書チェックを行い、自社にとって不利益が一切ない形式での契約書チェックを行う。他方、ベンチャー企業には大手企業のような法務部門が存在しない。そのため、大手企業の言いなりで契約書を締結してしまうことがある。特に、知的財産権の取扱いについて、気が付いてみたら、大手企業がベンチャー企業が作り上げたノウハウを収集し、それを自由に使い、契約終了後、自社でノウハウをベースに開発し、ベンチャー企業をないがしろにしてしまうこともある。

2019年6月、公正取引委員会は「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用」に関する実態報告書を開示しており、さまざま濫用ケースが紹介されているので、自社の取引でも同様なことが発生していないか、参考にされたい。

大手企業との取り組みを行う場合のポイント

ベンチャー企業は、大手企業と取引を行う場合、以下のポイントに気を付けたい。

①自社の何が欲しくて大手企業は取引をしてきているのか

②自社として何を守る必要があるのか

③知的財産権(特許権、著作権など)として保護される権利は自社は持っているのか

④ノウハウだけを使われて一方的に契約終了させられないか

という点を意識して、大手企業との取引に臨む必要がある。

もちろん、大手企業との取り組みにより、自社の事業が飛躍的に成長するチャンスでもある。大手企業との取り組み方は、資本注入、業務提携、合弁、共同開発など、様々な手法がある。自社のビジネスを守りながら、大手企業とのどのような取り組みを行うのか、慎重に検討すべき問題である。