コロナが変えた株主総会の進め方とは?

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新型コロナウイルスの感染拡大は、今後の株主総会運営の一大変革を起こすきっかけとなった。新型コロナウイルス感染拡大により、リアルの開催が極めてリスクを高めることになったためである。かつて、2011年3月の東日本大震災の際には、決算を締められない可能性や更なる大規模地震が起こるリスクを考えた株主総会運営が実施されたが、いわゆる「バーチャル株主総会」がここまで議論されることはなかった。やはり、リアル開催による感染リスクが、バーチャル株主総会の運営の動きを加速させた。新型コロナウイルスの感染拡大は、全世界的な景気動向に多大なる悪影響を及ぼしているが、こと株主総会に限って言えば、株主にとっての株主総会の出席の機会を増加させるという意味では、極めて大きな意味を持つ。

IT企業では「バーチャル株主総会」がスタンダードへ

2020年6月に株主総会を開催した122社において、「バーチャル株主総会」を実施した企業はわずか5%程度であった。しかし、既に上場しているIT企業やこれから上場を目指すITベンチャー企業にとっては、「バーチャル株主総会」はスタンダードになることが想定される。

私はこれまで過去のいわゆる「荒れた株主総会」時代を経験しているが、当時は、いかに円滑に短時間で株主総会を終わらせるか、「シャンシャン総会」が主流であった。

しかし、本来、株主総会は、株主とのリレーションシップを図る場であり、株主にとって、社長の声や考えを直に聞くことができる貴重な場である。「荒れた株主総会」がほぼ無くなった現在、重要なのは、株主との対話の機会を増やすことである。これこそが、本来のコーポレートガバナンスの在り方だ。

「バーチャル株主総会」は良い緊張感を生む

上場後に株主総会をサポートすることが多くあるが、上場後、2,3年も経つと、株主総会の緊張感が緩むことが少なくない。特に、一般株主が数名しか来ない株主総会が続くと、何のための株主総会なのか、という意識が薄れ、あまり株主が来ないことを心から祈っている場合もある。逆に、なぜ多くの株主に出席してもらえないのか、と嘆く企業もある。

 やはり、これは株主総会の場まで足を運ぶのが面倒なことが原因である。「バーチャル株主総会」は、多くの株主が容易に株主総会に参加、また、議決権の行使ができることにつながる。多くの株主の出席は、経営陣の良い緊張感を生み、株主総会の意義を改めて見直すきっかけとなるはずである。「通信環境が不安定となり、株主総会の運営に支障が出るかも」と「バーチャル株主総会」に及び腰の企業はまだまだ多い。

しかし、「バーチャル株主総会」をトライすることが自体が、全ての株主にとってメリットがあることであり、その導入を株主側も積極的に評価し、少々の運営支障を大目に見るべきスタンスも必要と考える。

これから数年の間、「バーチャル株主総会」が主流となる過渡期である。会社・株主ともに、「バーチャル総会」がスタンダードになるべく、温かい目で見守っていければと思う。