持ち分比率を維持して資金調達も。東京プロマーケット(TPM)へ上場する意味とは?

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東京プロマーケット(TPM)への上場数が増加していることが報道されている。TPMへの上場会社数は、2020年度には合計37社程度に達する。IPOを目指すベンチャーにとって、マザーズを目指すのが基本である。では、TPMに上場する意味とは何なのか、TPMとマザーズに上場することの違いの主なポイントを整理してみた。

1.上場までの規制の違い

 マザーズTPM
投資家一般投資家含むすべて特定投資家(プロ投資家)
形式基準株主数  200人以上なし
時価総額 10億円以上なし
利益額  なしなし
審査の主体主幹事証券+取引所J-Adviser
監査証明直近2年間直近1年間
四半期開示必須任意

TPMへの上場は、直近1年間の監査期間でよいため、上場準備期間が短くて済む。また、株主数・流通株式・時価総額・利益の額などの形式基準がない。TPMはマザーズと比較して、圧倒的に簡便な要件で上場を行うことができる。

2.TPMはキャピタルゲインを得るには適していない

では、上場にあたっての株式の売出や公募増資、上場後の株式の売買取引の状況はどうか?TPMにおける初値時価総額は、平均値で10億円に満たない規模感(マザーズは平均値で50億円を超える)である。TPMでは、プロ投資家のみしか、売買ができないことから、どうしても売買取引高や注目度は低くなる。となると、TPMは、やはり、株式を保有する経営者が上場にあたって、株式を売り出し、キャピタルゲインを得る、ということには適していないと考えられる。

また、すでに複数のVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家から出資を受けているベンチャー企業の場合、TPMに上場したとしても、投資家がキャピタルゲインを得られる金額やそのチャンスも少ない。そのため、そのような投資家からTPMへの上場に対して反対の声も上がりかねないと考えられる。

3.ではTPMへの上場の意味は?

①会社の信用度をあげることができる

有価証券報告書を開示することから、会社の財務状況をオープンにすることにより、会社の財務的信用度、及び社会的信用度も向上する。

②人材の採用の充実につながる

TPMとはいえ、上場することにより社会的な知名度は向上する。その結果、人材獲得につながる可能性もある。

③上場時、上場後も持ち分比率を維持したまま資金調達しやすい

マザーズのような形式基準がないことから、オーナーの経営支配を維持したまま、資金調達を実行することができる。

④マザーズなどの一般市場へのステップにすることができる

2019年12月 global bridge HOLDINGSがTPMを経由してマザーズに上場しているケースもあり、TPMへ上場し、開示体制を整え、経営支配を維持したまま、事業を進めて一般市場への上場するステップとするケースも出てきている。 TPMの活用方法は色々想定されるが、TPMの上場をステップとして、マザーズ上場へというルートは今後注目されることが想定される。