「株式会社リコー」のここがすごい!

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今回、ピックアップした有価証券報告書は、株式会社リコー、です。2021年3月期決算の会社の有価証券報告書が出揃ったので、これから私が興味深い有価証券報告書をまたご紹介していきたいと思います。一言、リコーの有価証券報告書は、充実・わかりやすさが凄いです。ESGとSDGsを徹底的に意識した開示であり、今後、モデルとして参照される優れた報告書の一つではないか、個人的に考えています。参考になる記載は多岐にわたるのですが、「事業等のリスク」の記載を中心にご紹介していきます。

株式会社リコーの「事業等のリスク」

「重点経営リスク」の決定プロセス

グループマネジメントコミッティ(以下、GMC)とリスクマネジメント委員会は、経営理念や事業目的などに照らし、利害関係者への影響を含めて、経営に大きな影響を及ぼすリスクを網羅的に識別した上で、重点経営リスクを決定し、その対応活動に積極的に関与しております。(図1:重点経営リスク決定プロセス)
・重点経営リスクは、その特性から「戦略リスク」「オペレーショナルリスク」に分類され管理されております。戦略リスクについては、短期の事業計画達成に関わるリスクから中長期の新興リスクまで経営に影響を与えるリスクを幅広く網羅しております。 ・リスクマネジメント委員会は、GMCの諮問機関として、より精度の高い重点経営リスク候補を提案すべく、委員会メンバーそれぞれの専門領域の知見・経験則を活かし、十分な議論のもと、リスクの識別・評価を行っております

(株式会社リコー 2020年度有価証券報告書)https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/securities_report/pdf/yuho2103.pdf

まず、リコーは、リスク管理を行う機関を明確に定めています。グループマネジメントコミッティ(GMC)とリスクマネジメント委員会の機関により、企業における重点リスクを決定します。GMCは、リコーグループにおいて、コーポレート・ガバナンスの核として機能する機関とされています。報告書65ページの「コーポレート・ガバナンス体制」を図示されていますが、ここでは、業務執行の中心機関として位置づけられていることがわかります。

(株式会社リコー 2020年度有価証券報告書p27)https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/securities_report/pdf/yuho2103.pdf

コーポレート・ガバナンス体制の中心機関であるGMCが、経営戦略上の経営指標や重要施策を確認するとともに、リスク管理に積極的に関与するとしており、同社がリスク管理に経営陣が中心となって積極的に取り組む姿勢を示しています。リスクとしては、戦略リスクとオペレーショナルリスクの2分類に整理するとされています。リスク項目の整理は多岐にわたり整理は悩ましく、20項目から30項目を並列的に記載する会社が多い中、大きく2つに分類する視点は、リスク管理上も非常に機能的と感じます。リコーの報告書は、ここで、リスク管理のPDCAを図示して、リスク管理のプロセスをわかりやすく示しています。

株式会社リコー 2020年度有価証券報告書p27 )https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/securities_report/pdf/yuho2103.pdf

リスクマネジメント委員会では、リスクを網羅的に抑え、その重要性を評価していきます。いわゆるリスクマップを作成、更新を行い、リスク管理を実行します。GMCは、リスクマネジメント委員会が重点リスク候補としたリスクにつき、最終的に重点リスクの決定を行い、リコーにおいて、1事業年度の間、どのリスク対応を優先的に行うのかを決定していきます。リスク管理は、何よりも対応の優先順位をつけることが大切です。すべてのリスクへの対応は限界があります。自社の弱点を絞り込んで対応することが必須であり、リコーでは、GMCがその役割を担います。徹底したリスク管理体制を構築し、それを報告書でしっかりと開示している姿勢は、ESGのGの開示として非常に印象がよいものと考えます。

事業等のリスクの説明が極めてわかりやすい
リコーでは、リスクについては、以下の項目で分類し、表形式にしています。

リスク分類 | リスク項目|リスクの説明 | リスク対策 | 影響度 | 緊急度

株式会社リコー 2020年度有価証券報告書p28抜粋)https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/IR/securities_report/pdf/yuho2103.pdf

重点リスク項目を中心に列挙し、自社が重視しているリスクに絞り込んだ開示をしています。このような絞り込んだ開示を行うことができるのは、先に示した、リスク管理のプロセスの仕組みを整え、その仕組みを丁寧に開示しているからです。
多数のリスク項目を記載するだけでは、自社が何に重点を置いてリスク管理をしているのか、投資家目線では理解できません。
リスクを洗い出すだけではなく、洗い出したリスクが自社に与える影響度を丁寧に分析し、どのリスクを優先的に対応策を講じていくのか、これこそがリスク管理の肝であり、これを体現されているのが、リコーの有価証券報告書です。