IPO準備段階での労務デューデリ(DD)の重要性

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すかいらーくが5分未満の労働時間を切り捨てて、労働時間を管理していたことに対して、切り捨てていた分の過去の賃金を2年間分、約9万人の従業員に対して支払うことを決定しています。総額が16億円~17億円になる見込みだそうです。巨大飲食グループなので対象となる従業員数が9万人に上ると、金額のインパクトもすごいですね。

IPO準備段階での労務デューデリ(DD)の大切さ

私は、上場準備中のN-3、N-2のベンチャー企業から、IPO準備段階のビジネスモデルに関するDDと労務DDの依頼を受けることがあります。これらのDDは、M&Aの売り手企業に対して行うDDとは異なり、これからのIPOに向けて自社の改善ポイントを整理するために行います。IPO準備段階の労務DDで、よく問題となるのが、労働時間管理です。

記事にある、すかいらーくでは5分単位での管理で問題になっていましたが、よくわるのが労働時間の管理を、15分単位や30分単位で行っており、切り捨ててしまって、未払い残業代リスクを抱えてしまいます。

2020年4月から労働時間の未払い残業代の時効が2年から3年に延長されています。今が2022年6月ですから、現在、未払い残業代を精算する際には2年2か月分の精算をする必要が出てきます。2023年4月以降に発覚した場合には、3年間分の未払いを精算する必要が出てきます。

労務DDで問題となるポイントは3つ

労務DDにより、労働時間管理の問題が発覚するポイントは3つです。
(1)1分単位の労働時間管理ができていない
(2)管理監督者(管理職)が法的に管理監督者といえない
(3)給与に多数の手当が存在しており、手当が残業代の算定基礎に含まれていない
この3つのポイントで対応に不備があり、すべて未払い残業代が発生してしまいます。


これらを不備は早めに止血しておかないと、ズルズル未払い残業代が発生し続け、対象となる従業員数が多い企業では想定しない支出をする羽目に至ります。
IPO準備段階は、労務管理に対して非常に丁寧に審査対象となるため、未払い残業代の精算は必須です。
もちろん、会社を設立し、早めに労務管理を適正化できていればよいですが、ほとんどのベンチャー企業は完全な労務管理体制は構築できていません。ベンチャー企業にとって、これはあるある問題です。
とにかく、IPO準備に入るのであれば、早めに自社のDDを実施して、ビジネスモデルや労務管理上の問題点を洗い出しておきたいものです。